「沈黙のひと」 [読書]
小池真理子さんの、「沈黙のひと」。
買ってすぐ読んでしまいました。
晩年にパーキンソン病になった主人公衿子の父は、しゃべることが
できなくなったり、脳梗塞などで体も不自由になってしまう。
周りのほとんどの人は、”この人はしゃべれなくて、意思もないような人”
と決めつけ、家族も含めぞんざいに扱う。
衿子だけは、この父の晩年にお互い愛情と信頼を確認する。
亡くなってから、残されたワープロや手紙に残された文章や、
晩年に文字ボードを使ってコミュニケーションできたことで、
しゃべれないことは、何も考えてないということではなく、
いろいろな思いを抱えながら、家族やホームの人たちと
生活していたということになります。
小池さんは、私と生まれがほとんど同じで、自分の親も
ここに出てくる父や母とほぼ同じ世代なので、共感できる
ところがたくさんあります。
小池さんはこの小説が自伝ではないと言っていますが、小池さんの
経歴をみると、半分以上は彼女の親をモチーフに書いたことがわかります。
家族関係などは多少脚色されているようですが、本に出てくるS石油、
東北帝国大学、朝日花壇、短歌の友人、亡くなってホームのベッドの
下から出てきたビデオなど。
小池さんのお父さんの生活がリアルに表現されています。
この本に出てくる衿子の父と同様、私の父も戦中満州に行ってた
のですが、晩年も含めその時の話はほとんどしませんでした。
数年前に父が亡くなったあと、戦時中のことを聞いておけば
良かったとも思ったのですが、戦中の話はたぶん聞いても
語らなかった、のではと思い始めています。
昔(明治や大正以前)は、人間50~60歳で亡くなっていました。
短命だった日本人が、近年の医学や健康診断の進歩、食生活や
生活環境の改善などで人は長生きできるようになり、
誰もが体が不自由になったり、認知症になったりする時代です。
この年老いていった「沈黙のひと」の姿は、今生きている
すべての人にいずれ訪れる事態ではないかと思う。
少し自分も来し方を反省し、行く末を案じるよう、心がけます。
この本は、一度読む価値があります。
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読み通すには一頑張りが必要かも。
読めば日本史の盲点に気付くでしょう。
ネット小説も面白いです。
人間は何のために生れて来たのかと云う問いに答えてくれるのはキリスト教など宗教ですが、無宗教だと困りますね。でも良い小説はその答えを作品それぞれに教えてくれます。
by omachi (2018-06-04 21:03)