「いのちの姿」 [読書]
宮本輝さんの、エッセイ集「いのちの姿」。
宮本さんの生まれてからの経験などから出た話で、どれも興味深い。
「泥の河」や「真夏の犬」に出てくる大阪湾に近いところ、
「朝の歓び」に出てくる北陸の風景、
「青が散る」に出てくるテニスや神戸といったところ、
みんな宮本さんの小さい頃からの原風景をもとに
書かれている話というのがよくわかりました。
この「いのちの姿」では、神戸のトンネル長屋の話は面白い。
昔はこんなのが普通にあったのだろう。
自分も30年以上前住んでいたところの近くに
長屋のようなアパートがあって、
変わった経歴をもつ住民がいたことを思い出しました。
だいぶ年のおじいさんが、自分を病院まで車で連れていって
と言われ、救急車を呼んであげたら、すぐ亡くなった、のです。
自分の車の乗せている時に容体が悪化したら、
など考えると、救急車を呼んであげて良かった、と思う。
そこには、いわくつきの人が住んでいました。
「そんなつもりでは・・」に出てくる
富山藩が財政難の薩摩藩と結託して
幕府に背いて清国から薬の材料を密輸する。
今でいう瀬取りなのかもしれない。
それで薩摩藩は大儲けしたので、その資金で
倒幕運動をした、ということになるのです。
そんな話も面白い。